人は見た目がすべてと考える傾向があります。好印象を与える人とそうでない人は何が違うのでしょうか?今回は第一印象をテーマに、円滑な人間関係を築くための重要ポイントをまとめます。
第一印象の意味や特徴から、第一印象の重要性、メラビアンの法則、第一印象を決定する3条件、第一印象を向上させるコツまで詳しくご紹介します。
第一印象とは?

第一印象とは何でしょうか?まずはじめに、第一印象の定義と特徴について解説いたします。
第一印象の定義
「第一印象」とは、人や物にはじめて対面した時に抱く最初の印象や感じを表しています。端的に言えば、初対面の際に受ける直感的イメージのことです。英語では、First Impression(ファースト・インプレッション)と呼びます。
第一印象はどれくらいで決まる?
第一印象は会って約3秒で決まると考えられています。出会って軽く挨拶を交わす程度の瞬間的な時間です。つまり直感的に一目見ただけで決まるのが第一印象なのです。論理的ではなく、感覚や感情で第一印象が形成されるのが特徴です。なお、第一印象ができあがる時間は人により違いがあり、1~30秒の人もいれば、数分かかる人もいます。
第一印象の重要性

では、第一印象が人間関係上どれだけ重要か、また第一印象の影響度合いについてまとめます。
第一印象が人間関係で大切な理由
第一印象はすべての人間関係の第一歩となります。職場や学校などのさまざまな社会において、第一印象は相手を判断する時の重要な鍵になります。第一印象がよければ、その後の人間関係が向上し信頼度がアップするので非常に有利です。一度信頼関係を築ければ説得力のある会話ができるため、特に仕事面ではビジネスチャンス到来も見込めます。
逆に、マイナスの第一印象を与えてしまうと、相手との関係性が悪化しやすく、どんなに努力しても回復は難しく低評価が継続しやすい傾向が強いです。
第一印象の影響はどれくらい続く?
第一印象がいったん形成されると、すぐに変わることはなく固定しがちです。トルコのビルケント大学の実験結果では、第一印象は半年変わらないことが実証されています。また前情報があったり、受け取る情報の順序が違ったりすると、先入観や偏見により第一印象に大きな影響を及ぼすこともわかっています。
初頭効果/ハロー効果について
第一印象に関わる心理作用「初頭効果」と「ハロー効果」についてご紹介します。
初頭効果 | ・最初に得られた情報が一番印象や記憶に残りやすいこと ・ソロモン・アッシュ氏(心理学者、ポーランド出身)が提唱 ・初頭効果により、第一印象がその後の人間関係に影響を及ぼしやすい |
ハロー効果 | ・ハローとは英語のhalo(後光)を指す ・エドワード・ソーンダイク氏(米国の社会心理学者)が提唱 ・全体の印象がいったん作られると、他の部分の評価も影響を受けやすい ・第一印象がいいと悪い面が目立たないため、その後もよいイメージのままキープできる |
アルバート・メラビアンの法則
心理学の研究を通して定義化された「メラビアンの法則」について、詳しく説明いたします。
アルバート・メラビアンはどんな人?
アルバート・メラビアンは米国籍で1939年生まれ。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の心理学名誉教授で、研究分野は感情心理学。1971年に発表した「メラビアンの法則」で一躍有名になりました。
「メラビアンの法則」とは?
「メラビアンの法則」は、「7-38-55 ルール」、「3Vの法則」と呼ばれることがあります。人がコミュニケーションをとる場合に、どのような情報が他の人に影響するかを実験したうえで、法則を導き出しました。
対人コミュニケーションに影響を与える情報は次の3つに大別されます。
情報の種類 | 影響する比率 | 特徴 |
---|---|---|
視覚情報(Visual) | 55% | ・ビジュアル情報が最も影響力がある ・服装/表情/視線/態度/立居振舞い/ジェスチャーなどの見た目 ・ノンバーバル(非言語)コミュニケーション |
聴覚情報(Vocal) | 38% | ・耳から得られる情報 ・声づかいや話し方 ・音量(大小)/スピード(緩急)/トーン(高低)/抑揚など ・ノンバーバル(非言語)コミュニケーション ・電話/オンライン会議では最も大切 |
言語情報(Verbal) | 7% | ・ことばによる情報 ・言葉づかい/表現、話の内容 ・バーバル(言語)コミュニケーション |
人からメッセージを受ける場合、話す内容よりもむしろ、外見や声などの言葉に頼らない条件に大きく左右されます。
第一印象との関係性

初対面で第一印象を決める際は、やはり外見や見た目で判断するのが普通です。実際、メラビアンの法則でも視覚情報は55%を占めています。次に影響力を持つのが38%の聴覚情報で、声づかいが第一印象につながります。そして、最後に言語情報として、言葉づかいや話の内容により第一印象が決まりますが、影響力は低くてわずか7%です。つまり第一印象はビジュアルで1/2超、あとは声づかいの良否で1/3強が決まります。圧倒的にノンバーバル(非言語)コミュニケーションの影響が大きい証拠です。
だからと言って、話す内容や言葉を重要視しなくてもいいということではありません。視覚/聴覚/言語の3つの情報をバランスよく合致させることによって、はじめて効果的で説得力のあるコミュニケーションが実現します。
第一印象を決める3条件
どんな条件で第一印象が決まるのか、3つのファクターについて以下に説明いたします。
服装/身だしなみ(外見的条件①)

出会って最初に注目するのが服装/身だしなみです。外見の中でも「静的イメージ」と捉えられています。着用している洋服、靴、アクセサリーなどがどんな物なのか、どのような髪型やメイクなのか、身だしなみがきちんと整えられているかどうかで、第一印象は大きく変わります。
一般的にスーツを着ると、落ち着き感や信頼感を与えられます。カジュアルな服装だと、親しみやすく気さくな雰囲気を演出できます。
表情/視線/態度/立居振舞い(外見的条件②)

服装や身だしなみが止まったイメージを作り上げるのに対し、「動的イメージ」は同じ外見でも動いた時の印象を左右します。具体的には、表情は顔の動き、視線は目の動き、態度は心の動き、体全体の動きが立居振舞いです。服装と違って、動的イメージはトレーニングを要します。
話し方

見た目はいいのに、話をするとイメージダウンする人がいます。話し方は特に声づかいと言葉づかいが大事です。声のタイプもいろいろあり、大小/緩急/高低/明暗/強弱などにより第一印象が異なります。言葉づかいでは、敬語を正しく使用しているか、標準語か方言かなどによって相手に与える印象が変わります。
第一印象をよくするコツ
では、第一印象をよくするためのコツについてポイントを解説いたします。
第一印象を決定する3条件のイメージアップのコツ

上述の第一印象を決める3条件ごとに、第一印象アップのコツをまとめます。
服装/身だしなみ(外見的条件①)のイメージアップ
服装/身だしなみを考える時の重要ポイントは3点あります。
清潔感がある
服装/身だしなみで最も大切なポイントが清潔感です。相手に不快な思いをさせないことを徹底して重視すべきです。高級ブランドで揃える必要はありません。洗濯やクリーニングされた清潔なものを常に着用しましょう。汚れ・ほつれ・シワがないよう、ホコリやフケが目立たないよう、普段からきちんと手入れをします。着崩すとだらしなく見えるので注意が必要です。おしゃれは足元からとよく言われますが、靴も定期的にチェックしましょう。スキンケアを欠かさず、メイクやネイルはナチュラルを基本にします。髪型は顔がはっきり見えるようきれいにまとめるのが秘訣です。男性の場合、爪や髭の手入れを忘れないようにします。匂いに敏感な人が多いので、香水やオーデコロンはつけ過ぎないよう気をつけましょう。また口臭や体臭にも配慮します。
動きやすい(機能的)
タイトなデザインの洋服やヒールの高い靴などは動きづらいうえ、危険なケースが想定されます。できる限り機能性も考慮して服装を選ぶようにします。
控えめで品がある
近年はオフィスカジュアルやクールビズなどが採用され、服装に対する自由度が増してきました。ビジネスではいろいろな年代の人と接する可能性があるため、TPO(時/場所/場合)をわきまえたうえで、豪華で派手なものは避けて、品のある素材やデザインを選ぶのがおすすめです。アクセサリー類は最小限にして、シンプルな腕時計や指輪程度にとどめましょう。電話の邪魔になるイヤリングなどはNGです。
表情/視線/態度/立居振舞い(外見的条件②)のイメージアップ
動的イメージを向上させるコツについてご紹介します。
笑顔を心がける
初対面の相手には笑顔で接するようにしましょう。「笑う門には福来る」と言われるように、笑顔には好感度を上げるパワーが備わっています。まずは口角を上げ、次に目も笑うようにします。「目は心の窓」という表現がありますが、心の状態が目に現れます。相手のことを嫌がらず大切に考えるようにすれば、自然と目の表情が優しくなります。相手に対し心をオープンにすれば笑顔になれます。余裕が出てきたら表情を豊かにするよう心がけましょう。
視線はソフトに
鋭い/怖い視線は避けて、柔らかい眼差しにします。一点集中して見るのはNGで、1対1なら相手の頭から襟元までを縦にして肩幅を横にした長方形エリア内で曲線的に視線を動かすといいでしょう。なお、視線をそらすのは失礼にあたるので、相手の目を見て適度にアイコンタクトを取りながらコミュニケーションしましょう。
態度は謙虚で控えめに
横柄で威張った態度や、おどおどして卑下する態度はやめましょう。相手をリスペクトする気持ちを持ちつつ、態度は謙虚で控えめにすると好感度が上昇します。
立居振舞いは颯爽と
身体全体の動きが立居振舞いになって現れます。姿勢をよくして、立居振舞いはキビキビと颯爽としたイメージが理想的です。正しい姿勢が取れると発声もよくなります。基本の4動作「立つ」「座る」「歩く」「お辞儀する」が自然ときれいにできるように普段からトレーニングしましょう。
話し方のイメージアップ
声づかいと言葉づかいに分けてイメージアップのコツをまとめます。
【声づかい】
メラビアンの法則の中で、ビジュアル情報に次ぐのは聴覚情報です。声のタイプ次第で、人に与える第一印象は大きく異なります。聞き取りやすく好印象を与える声は次のとおりです。
音量(大小) | 大きめ |
スピード(緩急) | ゆっくりめ、約300字/分が理想 |
トーン(高低/明暗) | やや高めで明るく |
滑舌 | ハキハキと元気よく |
間 | 必要なところで適度な間をとる |
メリハリ(強弱緩急など) | 一本調子の話し方にならないようメリハリをつける |
【言葉づかい】
言葉づかいが丁寧だと、特にビジネスでは相手からの信頼度が高まります。相手に応じて正しい敬語を使うことを心がけます。言葉の選び方は誰でも理解できてわかりやすいことを基本にします。学生言葉、流行語、略語、職場用語、専門用語は極力使わないようにします。話の構成についても順番をよく考え、3段論法(序論/本論/結論)や起承転結などでまとめましょう。
「あいさつ」と「お辞儀」は人間関係づくりに必要な切り札

会って数秒で出来上がってしまうのが第一印象です。初対面の段階で必ず行う「あいさつ」と「お辞儀」はまさに第一印象づくりとコミュニケーションの基礎になります。あいさつの「挨」は「開く」の意、「拶」は「近づく」を意味します。要は、あいさつとは「自分の心を開いて相手に近づく」ことです。日本人としてあいさつとお辞儀が上手くできれば、視覚と聴覚ともに好印象を与えて、その後の人間関係を向上させてくれます。
まとめ

好ましい人間関係を保つには、初対面の時に第一印象をよくするのが一番の近道です。会って数秒で作られる第一印象はその後も長く継続するのが特徴です。メラビアンの法則では、対人コミュニケーションにおいて視覚情報55%、聴覚情報38%、言語情報7%の影響力があると考えられています。実際に、服装をはじめ表情/視線/立居振舞いなどの外見的な条件や、話し方によって第一印象が決まります。上記でまとめた第一印象を向上させるコツを十分に把握して、特に切り札となる「あいさつ」と「お辞儀」を上手に行えば、よい人間関係が築けるようになります。