「賀寿(がじゅ)」という言葉を今までに聞いたことがありますか?現代ではあまり馴染みがないかもしれません。むしろ「還暦」や「米寿」のような言葉の方がよく知られています。
今回は、賀寿の定義や歴史から、賀寿の種類、賀寿の由来や特徴、賀寿の注意点、賀寿の祝い方などについて詳しく解説いたします。
賀寿(がじゅ)とは?

「賀寿(がじゅ)」は「賀の祝い(がのいわい)」とも呼ばれ、日本で一定年齢に達した際に行う長寿の祝いを指します。別名として「年祝(としいわい)」、「算賀(さんが)」とも言われます。
賀寿の歴史
中国文化の影響を受けて、日本では奈良時代に40歳以降10年ごとに長寿のお祝いをする貴族の風習があったと記録が残っています。当時は年齢にちなんだ数の贈り物をしたと伝えられています。中世になって70歳・77歳・88歳などの節目の年に賀を祝うようになりました。なお、江戸時代に長寿として考えられていた40歳(初老の賀)と50歳(五十の賀)を祝う風習は、高齢化社会の現代では廃れています。60歳の祝いが始まったのは近世以降ですが、今では賀寿といえば60歳以上の長寿の祝いと一般的に理解されています。
賀寿の種類
「賀寿」は年齢別に呼び名がついています。それぞれの種類と由来について紹介いたします。
賀寿の種類と名称の由来

「賀寿」の種類を一般的によく知られているものと、その他のものに分類して下記にまとめます。
よく知られている賀寿
よく耳にする有名な賀寿について、名称および祝う年齢と由来/特徴を説明いたします。
種類 | 年齢 | 由来/特徴 |
---|---|---|
還暦 (かんれき) | 61歳 | ・満60歳のお祝い ・十干十二支の組み合わせが60通りあり60年で一巡する →誕生年と同じ干支に還る「本卦がえり」 ・生まれ変わって赤ちゃんに戻る→赤色の贈り物をする |
古稀 (こき) | 70歳 | ・最近は「古希」と表記されることが多い ・中国の杜甫(とほ、唐の時代の詩人)が作った詩『曲江詩』の一節に由来する ・「人生七十古来稀(こらいまれ)」から2文字取って「古稀」 →70歳まで生きることは昔から珍しいという意 ・カラーは紫色 |
喜寿 (きじゅ) | 77歳 | ・「喜」の草書体である「㐂」が「七十七」と読める ・カラーは紫色 |
傘寿 (さんじゅ) | 80歳 | ・「傘」を略字にすると「八十」と読める ・カラーは金茶か黄色 |
米寿 (べいじゅ) | 88歳 | ・「米」の字が「八」「十」「八」に分解できる ・カラーは金茶か黄色 |
卒寿 (そつじゅ) | 90歳 | ・「卒」を略字にすると「九十」と読める ・カラーは紫か白色 |
白寿 (はくじゅ) | 99歳 | ・「百」から「一」を除くと「白」の字になる →100から1を引くと99 ・カラーは白色 |
その他の賀寿
上述した主な賀寿の他にも、覚えておきたい記念すべき長寿の祝いがありますので、改めて次表にまとめます。
種類 | 年齢 | 由来/特徴 |
---|---|---|
緑寿 (ろくじゅ) | 66歳 | ・「緑々寿(ろくろくじゅ)」を略した表現で、66歳とかけている ・日本百貨店協会が2002年に提唱 ・カラーは緑色 |
半寿(はんじゅ) 盤寿(ばんじゅ) | 81歳 | ・半寿: 「半」の字が「八十一」に分解できる ・盤寿: 将棋盤が9×9=81マスある |
珍寿 (ちんじゅ) | 95歳 | ・「珍」の字を、左偏の「王」は「一」「十」「一」、右のつくりは「八三」に分解→全部足すと1+10+1+83=95 ・珍しいの意味をかけて、110歳/112歳でも祝う |
百寿(ももじゅ・ひゃくじゅ) 紀寿(きじゅ) 上寿 (じょうじゅ) | 100歳 | ・百寿: 百歳というめでたい歳の意、「百賀の祝い」とも言う →101歳「百一賀」、102歳「百二賀」と一賀ずつ足して毎年祝う ・紀寿: 1世紀は100年だから ・上寿: 人間の寿命を上中下の3つに分け、上が100歳、中が80歳、下を60歳と考える ・カラーは白か桃色 |
茶寿(ちゃじゅ) | 108歳 | ・「茶」の字が「十」「十」「八十」「八」に分解でき、全部足して108 |
皇寿 (こうじゅ) 川寿(せんじゅ) | 111歳 | ・皇寿: 「皇」の字は「白」と「王」で構成されている →「白寿」の99と、「王」を分解した「一」「十」「一」を足すと111 ・川寿: 「川」の字が111に見えるから |
大還暦 (だいかんれき) | 120歳 | ・還暦が2回目となる(60歳×2=120) |
賀寿の注意点
賀寿についてはいくつか注意点がありますので、詳しく解説いたします。
◎元来は還暦のみ満60歳、他の年齢は数え年で祝うのが普通
◎最近は満年齢で祝うケースが多くなってきている
◎現在ではニーズに合わせて満年齢/数え年のどちらでもOK
満年齢 | ・現代の年齢の数え方 ・生まれた日を0歳と考えて、誕生日が来るごとに1歳ずつ加える方法 ・明治維新時の文明開化により西洋の習慣が日本に伝わったが、実際に普及したのは第二次世界大戦後 |
数え年 | ・古くから日本に浸透していた年齢の数え方 ・赤ちゃんが胎内にいる間も年齢に含め、生まれた日をすでに1歳とみなして、元旦(歳神様が訪れる日)を迎えるごとに1歳加える計算法 |
◎お祝いのタイミングは家族・親族で事前に相談が必要
◎数え年で年齢を認識している高齢者の場合は、念のため本人の意向も確認しておいた方がお互いの行き違いを防げる
賀寿のお祝いの仕方
お祝いを贈る相手は、家族や親類だけでなく、お世話になった上司や先輩、恩師、友達や知人などさまざまです。祝う時期、何を贈るか、金額の目安、贈り方などについて解説いたします。
お祝いする時期
長寿の年を迎える誕生日に合わせてお祝いするのがベストです。遅いよりは早めの時期を選びましょう。もし誕生日が不明なら、該当年の敬老の日に祝うのもOKです。家族皆が揃うお正月・GW・お盆の時期にしても構いません。本人の健康状態を考慮する必要があれば、真夏や真冬は避けて、過ごしやすい時季を選びましょう。
お祝い品それとも現金がいい?

年上の人に現金を贈るのはマナー違反と考えられています。お祝いに相応しい記念になる品物を選ぶのがおすすめです。本人の習慣や趣味、ライフスタイルに適したものを贈ると喜ばれます。差し障りなければ、本人の希望を前もって確かめることもできます。近しい関係なら一緒に旅行したり、食事会を開いたりするのも一案でしょう。
金額の目安
本人との関係性によってお祝い金額の目安が異なります。次の表を参考に贈る内容を検討しましょう。
贈る相手 | 金額 |
---|---|
両親 | 2~3万円 |
兄弟姉妹 | 1~3万円 |
祖父母 | 1~2万円 |
親類、恩師、友人 | 5,000円~1万円 |
贈り方のしきたり

お祝いの品を贈る場合は次のように手配しましょう。
掛け紙(のし紙) | ・のし: 有り ・水引: 紅白または金銀5本蝶結び ・毛筆または筆ペンを使用 |
表書き 上書き(中央上半分) | ・「寿」「壽」「御祝」「敬寿」「祝長寿」「長寿(之御)祝」 ・具体的に「祝〇〇」「〇〇之御祝」でもよい (例えば、「祝還暦」、「白寿之御祝」など) ・4文字は「死文字」で縁起が悪いとされる (「米寿御祝」などの4文字は避ける) |
表書き 下書き(中央下半分) | ・贈り主を記名(上書きより小さめに) ・個人: 普通は氏名両方、苗字のみ/名のみもOK ・団体: 団体/企業/部署名 ・連名: 3名まで(右から上位、同年ならアイウエオ順) 4名以上は 「〇〇一同」 (例:子供一同、親戚一同など) |

まとめ

賀寿(がじゅ)とは、もともと中国に由来する長寿の祝いですが、日本で発達してきた独自の風習と言えます。中でも、還暦・古稀(または古希)・喜寿・傘寿・米寿・卒寿・白寿の祝いは、人生の節目として現代まで受け継がれている大切な行事です。各々お祝いをする年齢や由来が異なりますので、きちんと理解しておく必要があります。従来は数え年で長寿を祝うのがしきたりでしたが、最近では満年齢で祝うことが多くなっています。本人や周囲の状況に応じてお祝いの時期や内容をを決めるといいでしょう。お祝いする時のマナーとして、現金は避けて記念になる品物を選び、適切な掛け紙をつけて贈るようにします。あるいは、親しい人が一緒に参加できる旅行や食事のプレゼントも大変喜ばれます。